―――視線が、痛い。
 そう感じたのは、瑞樹が屋上から飛び降りた翌日のことだった。
 瑞樹が飛び降りた直後、慌てた咲江は由香・絵梨の二人とすぐに職員室に走った。顔見知りの先生を強引に引っ張って校庭に戻った時には、すでに瑞樹の姿は消えていた。
 死に切れなかった瑞樹が自分でどこかに行ったのか、それとも三人が見たものは幻だったのかは判らないが、その日は夜になっても瑞樹は家に帰らなかったという。
 その話を聞いた人達が、自分達を責めるような視線で見てくる。それがとても痛い。
 言外に、瑞樹が行方不明になったのはあんた達のせいだと言っている。あんた達が瑞樹に嫌がらせをしていたせいだ、と。
 自分たちだって、止めることなく傍観してたくせに。

「どうせ、数日経ったらひょっこりやって来るんじゃない?」

 そう言った由香の声は少し震えていた。

 昨日三人が見たものは幻だったのかもしれない。それでも、紛れも無く見たのだ。瑞樹が校舎の屋上から飛び降り自殺を謀るその姿を。どこか非現実的に感じたが、いつどこで同じ事をするか判らない。
現に、今どこで死体となって発見されるか判ったもんじゃない。

「・・・・そうだね、どうせすぐ戻ってくるよね」

 そう答えた咲江の顔には、僅かに引き攣った笑みが張り付いていた。自分たちの考えを確定的にしようと、咲江は隣を歩いていた絵梨に同意を求める。
 例えそれが気休め程度にしかならなくても、少しでも瑞樹が生きていると信じていたかった。

「ねえ、絵梨もそう思うよね・・・・って、絵梨、どうしたの?」

 だが、今まで隣に居たはずの絵梨は、いつの間にか数歩後ろの位置で固まっていた。
 何度か声をかけてみると、絵梨は凍りついた表情のまま二人に近づき腕を掴み、そして強引に引いて歩き始めた。

「ちょ、ちょっと絵梨?」
「何?どうしたの?」

 二人は驚いて声をあげた。だが、かまわずに絵梨は二人を引っ張る。

「いいから、来て」

 そして廊下の角を曲がると、ようやく絵梨は手を離した。
引き攣った笑みを浮かべたまま、小さく言う。

「やっぱ、さっき見たの見間違いじゃなかったんだ」

 絵梨の視線の先に目をやり、二人は目を見開く。
 胸の奥から込み上げるこの激しいまでの感情は、歓喜か憤怒か或いはもっと別の場所から来る何かか。
 そこには瑞樹が、まるで三人が来るのを待っていたかの様に立っていた。
 その姿を見て、咲江はほっと安堵の息をつく。

「・・・・良かった、生きてて」

 瑞樹は何も言わずに三人を一瞥すると、口元で小さく嘲った。
 そう、確かに彼女は嘲ったのだ。激しい憎悪をその瞳に宿らせて。
―――殺される。
 頭をよぎるのは、その言葉のみ。
 次の瞬間に、瑞樹の姿は消え失せていた。
 あたかも初めから何もなかったかのように‥‥









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此処のシーンは好きじゃなかったのでほとんど書き下ろしたのにかかわらず、消しましたorz
気が付いたら、消えてたんです・・・・(遠い目)
時間があれば、いつか必ず書き直したいと思っています。



2005.04.03

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