「……おいで?」



両手を広げて呼ばれると、今のあたしはその腕の中に自ら入る。


変わったものと変わらないもの。


全てはまだ名付けられない想いに縛られて。





* 予感 〜〜 *





ぎゅっと抱きしめられると息が詰まる程に感じるもの。
何かが込み上げてくるけど、何も言わない。
自身の腕を相手の背へと回し、抱きしめ返す。


伏せていた顔を上げると、優しいキスが降ってくる。



何度も何度も繰り返し与えられるキス。
何度も何度も繰り返し与えるキス。



彼とのキスは…ただ甘くて。
未だに眩暈がする程、、脳髄まで痺れてしまいそうで。
何度も求めてしまう程…溺れているあたしがいて。


一度唇が離れても、ふとした瞬間に目が合えば…。
繰り返される、その触れ合い。
少し体が離れても、直ぐに引き寄せられる。


誰かの傍にいるという安心感。
いつの間にか、『彼』の隣に居る安心感になっていたけれど。




あたしは…何も言えなかった。


それは、彼が何も言わなかったから?

それとも、彼をを手に入れることができないから?


本当は、勇気がなかっただけ。
何も言わなければ今の関係のままでいられる。
このまま変わらなければ、失うこともない。


抱きしめられて、キスもされるけど。
決してその先は無く、紡がれる言葉もない。





……貴方ノ中ノアタシノ存在ハ何?





あたしの中では、もう欠くことなど出来ない所までいってしまったのに。
この腕の中があたしにとって失うことの出来ない居場所で。



気持ちが知りたい。
気持ちを伝えたい。


愛したい。
愛されたい。




伝えることの出来ない気持ちを胸に隠して、自らそっと唇を重ねる。


この気持ちを持つ事はいけないのかもしれないけれど。
思うだけなら、自由でしょう?


唇をゆっくりと離すと、彼が口を開いた。



「…ねぇ、リディア?」


突如告げられた言葉に、頭の中が真っ白になった。
急に涙が込み上げてきて、溢れそうになって初めて泣きそうなことに気付いた。


泣いては、いけない!


その口唇が何を紡ぐのかなんてわからないのに。
なのに、それなのに。



ただ、その先を聞くのが怖い。



彼は私を痛い程抱きしめて。
あたしの耳元で、そっと……そっと囁いた。




「…キスを許してくれるようになったけど、まだ僕の言葉は君に届かない?
嘘なんかじゃない。僕はね…」





END






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