まどろみにも似たこのぬくもり。
決して手離せない大切な人。




* 陽だまりの中で 〜〜 *




「……ん」



眩しさに細めながらゆっくりと見開くと、そこには穏やかに微笑む少女の顔が覗きこんでいた。
さらり、と落ちる髪を抑えながら、穏やかに微笑むその少女の笑顔に。
日光の眩しさとはまた違うものを感じ、更に目を細めた。


「……あ、起きちゃった?ごめんねぇ」
「いや、謝ることなんてないよ」


起き上がろうとすると、そのままっと止められてしまった。
やれやれ、とおとなしくそのまま従うことにした。

別段今日は気分が悪いわけではなく、気分はいいほうだった。
ただ彼女にちょっとだけ我侭をいって、折角だからと膝枕をお願いしたのだった。
なんだかんだいっても、世話を焼くのが好きなのか、嫌な顔一つせずに受け入れてくれた。


ゆっくりと、細く、白い指先で頭を撫でられる。
それすらもロキにとってはなんとも心地良いものだった。
なんだかまるで子供の時に戻ったようで、心地良さに再び目を閉じた。



――――ああ、こんなにも。


あまりにも幸せで。


―――――――泣いてしまいそうだ。



余りにも穏やかな時間。
今までになかった満ち足りた時間。



今までに、こんな時を過ごしたこともあったのだろうか。
自分とは対照的な彼女との関係。
だけど、お互いに信頼を寄せ、最後まであきらめずに立ち向かう。

それは、自分にもできるのだろうか?

常に恐怖は消えない。
けれど、もっとも恐れるのは彼女を置いていくこと。
彼女が泣き、悲しみをくれてしまうほうが今の自分には何よりも怖かった。



自分は……。




――――彼女と一緒なら、例えどんな結果になっても構わない。




目を再びゆっくりと開け、彼女を見上げる。

今は優しげに見下ろすその瞳には、時にはきらきらと眩いばかりの生命力に溢れた眩しさと、意外にも頑固な意志が隠されている。
その瞳は決して曇ることも無く、彼女はいつだって自分を見つめてきてくれた。
だからこそ、全てを委ねることができる。
いや、委ねたいのだ。


彼女が後悔をしないといったように、自分も彼女と同じ時を刻んだことを決して後悔はしないだろう。
それを口にすることはないが、彼女も多分そう思ってくれているのだろう。
むしろそんな後ろ向きな言葉を口にすれば、彼女はきっと怒るに違いない。



そう。

彼女なら。



怒って。

泣いて。

笑って。



きっとこう言うに違いない。




――――『ロキ君となら、どんなことでも乗り越えてみせるよ!』と。




なんとなく、自然と笑いが零れた。


「……ロキくん?」


それに気がついた彼女の不思議そうな声が降りてきた。
優しく撫でてくれたその手を取ると、慈しむようにその手の甲に口付けを施した。


「え…ちょ…っ!?」


突然の行為に案の定彼女は真っ赤になった。
反射的に引っ込めようとする彼女の手を決して離さずに、ロキはゆっくりと身体を起こした。


「……もう少しだけ…」


もう一度その手に口付けをし、その耳元で囁いた。


「で、でも……」
「もっと君を近くで感じたい」



そのまま思い切り抱き締め、その日向のような香りを思う存分吸い込む。
今の自分の思いを伝わるだろうか?


妙に弱気なのは、この日溜りがあまりにも穏やかで、優しいから。



もう一度強く抱き締めて。
この日溜りのような時がいつまでも続くようにと。
それを願い、きっと最後まで諦めきれない思いを胸に抱え続けるに違いない。





―――――――今はただこの日溜りに身を委ねたい、ただそれだけだった。





END





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