ザーザーと、雨音が聞こえてくる。
周波数の合わないラジオみたいに、ただ無機質に。
窓の外は、重く立ち込めた雲が圧し掛かかり、時折吹く弱い風が、雨の音を乱していた。





* 哀しみの周波数 〜  〜 *





少女はただ泣いていた。
彼女の心の中にある、いつまでも癒えることはない傷を抱えながら。



そしてそれは必然。



彼女の声にならない叫びは、雨音に掻き消され。
残るのは雨の奏でるノイズ。


何となく感じた胸騒ぎに、彼女は家路を行かず、目的の場所を目指して無心に駆け出した。


その日はいつもと同じ変わり映えのない日だった。
午後から振り出した、この雨を除けば。



『ロキくんっ!』


待っていたのは、いつもの憎まれ口。
それ位願っても構わないでしょう?



そして、それは必然。



空の部屋。
暗い、暗い、無人の。



いつもなら、散歩に行ったんだって単純に考えるのに。
今日は生憎の雨。
外出嫌いな彼が、こんな日に散歩に出るわけもなく。
なら、どうして?


空は光る。
眩しく、そして重々しく。
光った。
思わず閉じられた双方の瞳。



―まゆら



いつもの声が聞こえた気がして。
だけど、それは夢。
眼を開けても、彼の姿は何処にも見当たらない。
それに、先程まであったはずの景色までも消え失せて。


『・・・あれっ?』


今まで確かに居た、無人ではあったが確かにロキの邸に。


どうして?

どうして?


雨は無情にも彼女の髪を、服を、全てを濡らしていく。


ねぇ、どうして?


…分からないの。



『ロキ君のお家って…どうやって行くんだっけ…?』



走り出していた足を不意に止め、不安をそのまま口に出した。
いつもなら笑って許せるようなこの言葉だって、今は不安を募らせるばかり。
いつもなら自然と足が向かって、今日のミステリィは何かな?
なんてわくわくしながらだってあったし、考え事に気をとられて、気づいたらロキ君のお家についていることだってあるのに。


今日はいつになっても、いつまで走っても知らない街。
でも、確かに此処は私の街で。
だって、家への帰り道だってすぐに分かる。
学校への道だって同じ。



なのに、なのに。
どうしてロキ君のお家だけ分からないのかな?
まるで、最初から存在しなかったように。



ろきくん

ろきくん


ねえ?


私ね、ロキ君のお家が分からないんだよ。
あんなに毎日、毎日通っていたのに。
闇野サンの作ってくれる甘〜いお菓子の香りとか、丸くなって気持ち良さそうにお昼寝してるわんことか。


いっぱい、いっぱい。


答えてよ。
いつもみたいに呼んでよ、私の名前。


笑ってもいいから。


だから


助けて


助けて





逢いたいの。


ただそれだけ何だよ?
逢いたくて。
そんな感情ばかり溢れているの。


哀しい
寂しい
愛しい


此処に居て
隣でなくていいから
そんなワガママ言わないから


ねぇ?


雨は何も語らない。
今日の雨は、ただ少女を暗い記憶の底に連れて。
彼女の涙を己に混じらせて。
彼女の叫びをも飲み込んで。



雨はまだ止まない。






END



以下、もとにした詩デス。


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降りしきる雨の中
貴方を想って
帰らない日々

愛した過去

全ての記憶が
心の底で今も音を立てている

戻りたい
戻れない
逢いたい
会えない

愚かに繰り返しては
涙を流す
雨に溶けて混じった涙
掌に掬い口づける

声なき声で叫んで
貴方を呼ぶわ

「ねぇ名前を呼んでよ、私の名前」

両手で顔を覆い
雨が体を濡らし

私を優しく包み込む

今何処にいるの?
今度尋ねてもいいですか?

貴方の顔見て一言交わせれば
それでいいの

…きっと
それで想いを断ち切るわ






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