僕が失くしてしまったモノ。


何処に失くしてしまったのか。


何を失くしてしまったのか。



答えは深い深い、海の底。





* 夢見た後で 〜  〜 *





夕暮れの浜辺の色彩は、現実から程遠く。



ピンクの空に、紫の海、流れ着いたガラス瓶のエッジの色はオレンジ色に染まり。

象牙色の砂には、時々白い小さな石ころが。

影と一体となった鳥タチは何処へ向かおうというのか。

草木は早々帰ってしまい、残るは防波堤に残されたテトラポット。




囁き合いが、押し寄せる静かな潮の合間に流れ込んでくる。




どうして、砂浜は曲線を描くのだろう。


行く先は海に突き出した岬。

銀色に輝く灯台。

沖で時間の止まった貨物船。




僕の手はキミの手を握っている。



何かを思い出すように、優しく、そしてしっかりと。




砂を踏む音が、後方へと逃げていく。

僕の口から出た言葉も、海の中へ吸い込まれていった。




白い手

白い腕

白い肩

白い首

白い顎


そして


紅い唇




揺れるキミの髪、揺れる視線、キミの瞳。

その瞳に映る水平線のピンク。





『――ごめんね』

『何が?』




波の音の中に、心地よく流れ込んできたキミの声。

戸惑いの色を秘めて。




砂は砂を乗り越えて、個になる。

水は水を飲み込んで、混ざり合う。

朽ちた木片、輝きを失った貝殻の破片。


ひしゃげたビール缶。


誰も連れて行ってくれない。

誰も片付けてはくれない。




『――そうか』

『・・・』



『キミがいないこと忘れていたよ』

『うん。ごめんね、死んじゃって』








聴こえるのは引いていく潮の囁き。


全てを包む海の呼吸音。




END





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