ひとつだけ願いを叶えるよ、という天使の声は、優しかった。





* 晴れ渡る空を 〜 願いごと 〜 *





「……多分」

「なに?」

「私の『一番』は、自分の力で手に入れなくちゃならないの」



私の一番を、私の力で手に入れないなんて。
そんな一番があっていいわけがないし、
誰かに与えられるものが一番になるはずがない。



「あなたにもらわなくても、きっと出来るわ?」


確信なんてないけれど、私を信じずにはいられない。


「うん、いい心がけだね」と、笑う天使は優しかった。


「私、知ってるのよ。願えば叶うっていうの、お伽噺の中だけの話なの」


ただ、天使は笑顔を崩さなかった。


「願いを叶えられるのは、選ばれた子でもなく、夢を見続けた子でもないの」



「…僕にね、才能を下さいという人がいるよ」

「それも違うのよ」


それは、自分以外の誰かが決められるものではないのだから。
他人ではなく、天使でも、そして神でもなく。



「答えを教えて?」

「それは、一番になるために、努力が出来る子よ。 
 負けない心を愛す人。他人を認める強さを持つ人」


「人を否定するのは簡単だけど、認めるのはとても難しいこと」


「純粋に、すごいな、って思うの。そう、確かに難しいこともあるのよ。
 だけどそういう心は全て、この手で手に入れるの」



そうじゃないと意味がない。
右手をぎゅっと握る。
そう、小さくて、何の力もないかもしれない。
だけど、何もできない訳じゃない。
もう一度右手に力を込めて、言葉を紡いだ。



「多分、これが全て」

「そうだね」



その手でどこまでいけるか、僕も君も知らないけれど。



「じゃあ、僕に祈らせて?」


僕は天使だからと。


「君に何もしてあげられない」


だからせめて、祈りを許して。



「じゃあ一つ、願いを叶えて」

「何を望む?」

「私が辛くなったら、空を晴らせて。
  雲ひとつない青空と、曇りない満月を目指して。
  きっとまた頑張ろうってそう思えるから」


「約束するよ」




ねぇ、きっと頑張れるわ。
天使さまがくれた勇気と晴れ渡る青空があれば。





END





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