王子様と再び逢う為に、声を失った人魚姫。
けれど、王子が彼女を愛することはなかった。
それでも殺められず、ついに海へと消えた儚い生命。
彼女の本当の心は誰も知らない。



*懺悔の言葉 〜月光〜 *



たとえばそう。
幸せの終わりに一輪の花が咲いているような。
その花が私にとっての貴方でした。


刺すような足の痛みも、歌えなくなった喉も。
貴方にもう一度会えるなら、逢う為なら耐えられた。
貴方が微笑んでくれるだけで幸せ。
貴方が隣にいてくれるだけで幸せなの。
たとえ貴方が私を覚えていなくても。


それでも、命の終わりはすぐそこまで迫って。
小さな砂時計。
砂が落ちきるまでの僅かな時間。
夢の終わりは泡沫の幸せ。


ただ消えてしまうことが怖かった。



どんなに伝えたい言葉でも、伝わらない。
声がでない。
延ばした手にも、貴方は気付かない。


私以外の人にそんな風に笑い掛けないで。
幸せそうに微笑まないで。
こんなに愛しているのに。


どうして貴方は気付いてくれないの?



月明かりの下で何度も願った。
愛する人が幸せなら自分も幸せ。



…なんて嘘。


もしそれが本当なら。
私の想いは?
私のこの想いは何?


私の想いが嘘になる。


愛してくれない貴方が嫌い。
私を見ない貴方が嫌い。
嫌い、嫌い、大嫌い。


…なのに私は貴方を嫌いになれないでいる。
泡になるのは怖かった。
でもね、貴方が愛してくれないことの方が、ずっとずっと怖かった。
ワガママな私。
オコサマな私。


愛してくれなきゃ愛せない自分。
だって私は見つけてしまったから。
何よりもも、今まで見たどんなものよりも欲しいものを。


貴方にもう一度逢いたいと願った気持ちに偽りはなかった。
けれど、貴方を殺そうとしたことがないといえば、嘘になる。
貴方の傍にいることが辛かったのも事実だったから。


でも、こんなに大切な貴方だから嫌いになんてなれない。
傷付けたくない。
汚したくない。




だからせめて。
せめてひとりで海に還ろうと思ったの。


どうか、哀しまないで。
暗い暗い海の中で私は貴方の一部に、世界の一部になるのだから。



乾いた風の音
静かな砂の上
あの月光に導かれ


無から有へ
水から骸へ
そして亡骸へ
亡骸からまた無へ


変わっていく
消えていく


水の音
月の光
月の影
幻影
漂う記憶




ほら、泡沫の夢物語もそろそろ砂が落ちきる時間ね。
貴方は気付かないでしょうけど。




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シリアス系10ノお題より 『月光』

オリジナル

人魚ヒメって本来は悲恋ものでしたよね?
何だかディズニーの影響で、記憶があやふやなんですけど;
一度書いてみたいなぁとか思っていたのですが、私が書くと重い気が・・・。


2005.06.11


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