―――それを見つけたのは、偶然だった。







機械人形
―mechanical doll―










その、黒いモコモコとした物体は無造作に転がっていた。
おそらく塀を乗り越えて入って来たのであろうソレは、白日の光には似つかわしからぬ姿を晒している。
生前は柔らかく艶やかであったであろうその毛並みには、はみ出た内臓と血がこびり付いており、足も本来とは違う方向に曲がっていた。
しかし、生前の姿も現在のその姿も、彼女にとってはどうだっていい情報だ。
肝心なのは、それが『壊れた』猫であるという事なのだ。
庭に出て、血が付くのも気にせず猫の死骸を抱きかかえ。
彼女は再び建物の中へと戻っていった。








その広い建物に暮らすのは、一人の男。
そして、男の愛しい人形のみだ。






男が廊下を歩いていると、後ろから『博士』と声を掛けられる。
当然それは、彼の愛しい人形で。

「―――なんだい?」

口元に穏やかな笑みを浮かべつつ振り向けば、彼女の腕の中には黒い、小さな猫の死骸がある。

「それは?」

穏やかな声で問えば、相反して彼女は表情の無い顔で淡々と庭にあったと答えた。

「そう……野犬が壁を越えて入ったとは思えないから、烏か何かにでもやられたのかな」
「壊れてるみたいだけど、博士は直せる?」
「ああ、ごめんよ。これはもう治らないんだ」

男が申し訳なさそうに、そして愛おしそうに人形の頬に指を滑らせば、感情表現の乏しいその顔が僅かに哀しそうに陰る。
そう…とだけ呟く彼女の腕から猫の死骸を取り、男は相変わらず穏やかな表情で。

「でも、安心しなさい」

人形の髪を梳きつつ。

「『治す』ことは無理だが、『再び動く』ようにすることは出来るから」

そして、彼女の額に愛おしそうに……愛おしそうに口付けた。








「そう――――――君と同じく」








男の表情はどこまでも穏やかで。







―――その建物に暮らすのは、一人の男と彼の愛しい人形。


男の狂った愛は誰にも気づかれる事はなく。




  END






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確かこれは、短い話が作りたくて高2の時に考えたんだったかな?
イラスト自体ではもっと前から出来ていたので、じゃあこのキャラを使って考えようって思って。
個人的にこの子達は大好きです。
哀れな感じで。


2004.12.19

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